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教科書

第18章 力率改善

力率を1に近づける『進相コンデンサ』。電流・損失・電圧降下が減り、設備に余裕が生まれます。

1. 力率が悪いと何が困る?

力率(第8章)が悪いと、同じ仕事(有効電力)をするのに大きな電流を流さなければなりません。

電流が大きい=
・電力損失(I²r)が増える
・電圧降下が増える
・電線や変圧器など設備の容量を圧迫する

つまり力率が悪いと、ムダな電流で設備も電気代も損をする、ということです。

力率改善で電流が減る
力率改善で電流が減る

2. 進相コンデンサで改善する

工場の電動機など、コイル成分の多い負荷は電流が遅れて力率が悪くなります。

そこに『進相コンデンサ』を並列に入れると、遅れを打ち消して力率を1に近づけられます。(コンデンサは電流が進む=コイルの遅れと逆)

力率が1に近づくと、必要な電流が減り、前ページの困りごとが一気に解消します。

3. 改善の効果まとめ

進相コンデンサで力率を改善すると:

・線電流が減る
・電力損失(I²r)が減る
・電圧降下が減る
・変圧器・電線の容量に余裕ができる

ただし『有効電力(実際の仕事量)』そのものは変わりません。あくまでムダな電流を減らすのが力率改善の役割です。

4. ここでつまずく:力率改善の意味の取り違え

力率改善でつまずく最大の誤解は『有効電力(仕事量)が増える』という勘違い。これは違います。コンデンサで改善できるのは『無効電力』だけ

有効電力 P:実際の仕事をする電力(モータが回る・電球が光る)
 → 力率改善でも 変わらない
無効電力 Q:仕事しないけど回路を行ったり来たりするムダな電力
 → 進相コンデンサで打ち消す → 線電流が減る
皮相電力 S:見かけ上の電力(V×I)→ P²+Q²の平方根
 → 力率改善で減る(電流が減るから)

『仕事量(P)は変わらない、ムダな電流が減るだけ』。これを押さえれば、過去問の選択肢で正しく判別できます。

過去問の選択肢パターン
・有効電力が増加する → 誤り(『誤りを選べ』の正解)
・線電流が減少する → 正しい
・電力損失が減少する → 正しい
・電圧降下が減少する → 正しい

『誤りを選べ』問題では『有効電力増加』が罠の定番。『有効電力は不変』と覚えておけば外しません。

5. 現場のひとこと

力率改善は、ビルメンの“省エネ提案の定番ネタ”です。

受変電設備には進相コンデンサ(SC)が入っていて、これが劣化・故障すると力率が落ち、電気代の力率割増が効いて基本料金が上がります。電力会社は力率85%を基準に割引・割増を設定しているほど、力率はお金に直結します。

『最近 力率が下がっている → コンデンサの点検・更新を』という提案は、オーナーにとって分かりやすいコスト削減そのもの。

第8章の力率(cosθ=R/Z)と、ここがつながります。計算で出した力率が、現場では“毎月の請求書”に化けている——そう思って読むと一気に実感がわきます。

POINT

6. ここだけは覚える

・力率が悪い→大きな電流→損失・電圧降下・設備圧迫
・進相コンデンサを並列に入れて力率を1に近づける
・コンデンサはコイルの遅れを打ち消す
・効果:電流↓・損失↓・電圧降下↓・設備に余裕
・有効電力(仕事量)自体は変わらない
・ひっかけ:『有効電力が増加』は誤り

次は確認問題。第2部の総仕上げです。

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確認問題で定着させると、グッと身につきます。

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